教育を受けたのは刀剣を扱う店でしたが、亡くなられた有名な先生がおられまして、先生が良く店に来て、「我々は刀が好きで、まったく刀のために生まれてきたようなものだ。一生の念願は愛刀の国民化でこの運動を極力やっていきたい」。一部のお金持ちだけでなくサラリーマンでも商売屋さんでも、誰もが刀を持てるようになる。そうしなきゃならんということなんです。

先生のこの話に非常に感心して、これは刀で儲けるということでなく、愛刀精神を日本人の、特に男子の方に深めよう。刀は、われわれが死んでもずっと後何百年も伝わるわけですから、日本の財産である。ですからそういう運動をやって、日本刀を健全にしかも若い人々に伝えていきたい、と考えるようになりました。最近になり、やや考えていた希望に沿って店も増えて、デパートなどで展覧会をやり、念願の「刀廊」も開設できた。若い社員も増えてきた。少しずつ従来の刀屋ではなく、刀剣○○という美術商として近代化しつつあるわけです。

私が少年時代に胸に刻んだ愛刀の国民化運動というのを死ぬまでやっていこう、それをやっていくことが私どもの生活に繋がるということですね。刀屋の息子に生まれ、このような生き方をしているのはやはり運命・天命ではないかと思います。

ところでひところは税金問題で頭を痛めました。しかしこのことで私の考えもずいぶん変わってきました。税金の場合でも、人が払っていないのになぜおれが払うんだ、おれはもともと少しでも払っている。払っていない人が多いんだという考えが非常に強かった。それがだんだんと変わってきまして、仕事を大きくして立派にやるには税務署のひとが取るんじゃない。国家に入るんだ。

だから、やはり、事業をやるには儲けの半分くらいは税金におさめなければいけないと思うようになりました。それでいままで頭抱えて税金税金と思っていたのが、株式会社の組織にして専門家にそちらの方をお願いしてからは、たいへん楽になりました。いままでは税務署がいつ来るんだろう、電話がかかれば鳥肌を立てているようなぐあいだったんですが、今は電話があっても経理担当の社員と専門家の先生に頼むということで、私がいちいち考えなくて済む様になりました。はやく転換して良かったと思います。社員が多くなると昔流の刀屋商法というわけにいきません。将来は仮に社員三十人とすると一人に三十本ずつ預けて、しっかり管理しながら売るという責任制、そういう販売方法を考えています。それと販売ともどもにやはり仕入れが大切です。それが刀が年々高くなっておりますから、高くなれば買う反面、売る人もおります。地所と同じです。ですから真面目に、あまり安く買うとか、買ったものに対してお金を払わないとか、そういう失礼なことがない限りは刀剣柴田ならと言って信用して売る方もたくさんおられ感謝しております。私どもやはり、三人、四人でやっていく刀屋さんの方があるいは楽かと思いますけれども、ここまで来ては後に引けませんし、そういうふうな商報に早かれ遅かれみななってくるでしょう。刀剣の方ももちろん装剣小道具も明るくなって、その値打ちの信用もどんどん上がっていくことでしょう。